Trans Japan Alps Race
2021.10.20 マガジンCOOのFです。
皆さん、Trans Japan Alps Race(以下、TJAR)をご存知でしょうか?
2年に一度開催される、日本海富山湾をスタートし、北アルプス、中央アルプス、南アルプスを縦断し、太平洋駿河湾のゴールまでを8日以内に走破するというレースです。
全ての工程を合わせると、富士登山7回分、フルマラソン10回分に相当します。僕は、100㎞のウルトラマラソンを何度か完走しておりますが、全く次元が違う、自身の想像の域を遥かに超えたレースです。
NHKで放送されるこのレースのドキュメンタリー番組をいつも楽しみにしているのですが、今回は友人も出場しているということで、しっかりと拝見しました。
NHKのドキュメンタリー番組でいつも冒頭にお決まりのナレーションが流れるのですが、それは‘‘このレースには賞金・賞品は一切ない‘‘というものです。選手たちは何か、お金とかモノではない自分の大切なものの為に、このとんでもない道程に挑戦し自身の限界を超えた(限界の遥か向こう側の)境地と向き合い続けるのです。意外に思われるかもしれませんが、出場選手のほとんどをプロのランナーではない方たちが占めているのです。出場選手の平均年齢も40代を超えており、人生の酸い、甘いを一定程度経験した良い大人たちが自分の限界に挑戦するのです。
先日の放送で印象に残った53歳の銀行員の方について書きたいと思います。彼曰く、39歳の時に行内で部門の異動があった、所謂、‘‘左遷人事‘‘とのこと。インタビューでは、これまでの人生、‘‘挑戦‘‘というものをしてこなかったとのこと。
手の届く大学に入り、バブル期の追い風に乗り何となく銀行に入行し、結婚し川崎市に35年ローンで住宅を購入し、と、言い方は悪いですがどこにでもいる‘‘普通のおっさん‘‘ですよね。(毎日、仕事に通っているだけでも十分尊いことは承知の上で、このように表現しております。)その彼が、TJARの存在を知り、近所を走るところから始め、厳しい予選を通過し、スタート時点にたったことは、これまでの人生で抱えていたモヤモヤを振り払うには十分すぎる大きな挑戦だったのだと思います。
結果的に、今回のレースは台風の影響を受け途中で中止になりました。このレースのために複数年、中には10年以上も準備をしてきた選手もいますので(そもそも、能力のない選手を出場させると命を落としてしまうことも想定されるので、簡単には予選を通過できないのです)、中止を知った時に涙を流す選手も少なくありませんでした。毎回のことなのですが、究極の挑戦の果てに折られる心の様をテレビ越しに見ると自分も涙が止まらなくなります。今回は特に、選手にとっては‘‘無念‘‘であったと思います。
ただ、挑戦した自分に対する清々しさを感じている選手も多かったのではないかと思います。組織の中での理不尽な抑圧や、どうしようもない違和感、自分はこんなはずじゃないといった思い、多くの人がそんなものと日々戦い、時には葛藤と向き合ったり、時には目をそらし適当にごまかしたりしながら生きているのだと思います。
そんな何とも言えないモヤモヤへの特効薬があるとすれば、自身への挑戦なのかも知れない。
そんなことをTJARの出場選手から教えてもらっている気がします。TJARは正に、人間賛歌です。TJARに関する書籍やDVDなども発売されております。もしよければご覧下さい。魂が揺さぶられる経験となることをお約束します。