
やさしい世界
2025.04.29 マガジン人は何らかの欲求(ニーズ、理由、機能など様々な呼び方があるが、ここでは「欲求」に統一する)を満たしながら生きている。
その欲求の満たし方が社会に適合するかしないかは、人の人生を大きく左右する。
理想論に聞こえるかもしれないが、こんな考えが少しでも広がれば、世界はもっと過ごしやすい場所になるのではないかと思いながら書いている。
皆さんは能力主義にどこまで賛同するだろうか。
多様性を重んじよう、ありのままでいいよ、そんな耳当たりの良い言葉が並ぶが、現実には残酷な一面もあるように見える。
僕の精神が未成熟なせいかもしれないが、少なくとも僕にはそう感じられる。
能力主義が強調される現代社会では、成功者と評価される人々の多くが、自身の欲求を満たす行為と社会的な賞賛が一致していることが多いのではないか。
(もちろん、努力は素晴らしいものだし、そんなことを言う前にもっと努力しろという批判は甘んじて受け入れる。)
多くの成功者がいる一方で、不適切な欲求や機能の満たし方によって生活が破綻する人々も存在する。
例えば、過度にギャンブルや薬物や性的嗜好に溺れて生活が破綻してしまうケースもある。
生活が破綻したり、他人に迷惑をかけたりする人は意思が脆弱、節度が足りない、努力が不足している、本当にそうだろうか。
大谷翔平選手は野球の努力をしたくてたまらないのだろうし、バカラで100億以上溶かした井川意高さんもバカラに興じたくてたまらなかったはずだ。
個人の欲求を満たすために、常人では考えられないエネルギーを発揮する(井川さんはほぼ不眠、飲まず食わずで24時間以上バカラのテーブルに張り付いていたという話もある)ので、この点において、二人の行為は紙一重に感じられる。
(そう考える方が健全なのではないかと思う。)
授業中に立ち歩く小学生を例に挙げてみよう。
一般的に考えれば、授業中に立ち歩く行為は問題とされる。
では、この問題行動にどのように向き合うのが良いか考えてみよう。
叱責して恐怖心で行動を抑制することも一つの方法かもしれないが、創造性に欠けるように思える。
その子どもがなぜ立ち歩くのかを考えてみよう。
ざっと思いつくだけでも以下のことが考えられる。
1. 椅子の感覚が気持ち悪いのかもしれない
2. その授業が苦手な科目で先生に当てられるのが怖くて逃げ出したいのかもしれない
3. 立ち歩くことで他の生徒が注目してくれ、そのことが快感になっているのかもしれない
1の場合は椅子とお尻の間に何かを挟んであげれば良いし、 2の場合は先生がこっそり「〇〇君のことは当てないから安心して」と伝えてあげれば良いし、 3の場合は学級委員などに選任してあげて前向きな形で注目を浴びさせてあげれば良いと思う。
行動の背景には必ず欲求がある。そして、その欲求を満たす方法は決して一つだけではない。
欲求を満たすために社会的に受け入れがたい、もしくはあまり望ましくない行為が表出しているのであれば、代替案を考えてみよう。
『BORN TO RUN』という本に記載されていたと記憶しているが、海外のウルトラマラソンの出場者の中には元々薬物の常用者だった者が一定数いるそうだ。
薬物で得られた快楽をマラソン(そのレース中に出る脳内物質での快楽)で代替しているとも言える。
僕自身も仕事がそれなりに順調で、走って、サウナに入って、友人と酒を飲んで、ラーメンを食べれば、自身のほとんどの欲求は満たされる。
ギャンブルや薬物や性的欲求に過度に溺れずに済んでいるのは、自身の努力や節度の問題だけではなく、運の要素も大きいと思っている。
仕事もなく、友人もいない。
そんな状態を想像すると、自分もいつダークサイドに落ちてしまうか分からない。
その人の問題行動を人間性そのものに帰結させるのではなく、環境の調整などによりいかに欲求を適切に充足させるかが重要だ。
過度な能力主義は、運の要素を含んだ適者生存ゲームにつながりかねない。
自分の人生に文句ばかり言う人や人生の評論家のようになり何も行動を起こさない人は好きにはなれないし、自身は決してそんな人間になりたくないと強く思う。
しかし、社会が人に向き合うスタンスとしては、問題を人の性格や特徴(努力できる人や怠惰な人など)に帰結させるのではなく、何らかのチューニングを施し、個々の欲求を適切な方法で満たすことに変換していく方向が良いのだと思う。
まずは自身の行動がどんな欲求を満たしたくて行っているか考えてみる。
もし、止めたいのに止められないことがあれば、代替行動を考えてみる。そんなことに取り組んでみるのはいかがだろうか。
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