聴くことの重要性

2023.05.09 お知らせ

組織で仕事を進める上で、心理的安全性が担保されることが重要。
心理的安全な場では、発言することへの恐怖心などがなく良質な対話が生まれる。

このことが仕事を進める上では大切とされている。今回の記事一歩踏み込んで「聴く」ということに焦点を当ててみようと思う。

良質な対話がなぜ必要か?人と人が分かり合うためには対話が必要、これは道徳的には正しい。
では、仕事を進める上で道徳的であらねばならないか?

答えは組織によってまちまちであろう。法律を逸脱しない範囲で従業員には有無を言わせず働かせ利益を得る、こういったやり方ももちろんOKだと思う。

戦後からバブル崩壊までの日本の経済的成長を支えたのは、
・終身雇用
・年功序列
・企業内組合
であると言われている。
これらを日本的経営の3種の神器と言うそうだ。

学校卒業後は生涯を捧げる覚悟で会社に入社し、8割程度の社員は課長くらいまでは出世出来、雇用を含む様々な労働条件は労働組合が守ってくれる。

自身が経験をした訳ではないので、正確には分からないがざっとこんな感じで企業人としてのキャリアを歩む人が多かったのであろう。(多くの場合が男性であった。)

こういったキャリアモデルの是非を問うつもりはないが、当時はほぼこういったモデルしかなかったのだ。
それに付随し、多くの人が同じような価値観に基づき、同じようなライフスタイルを選択していたと推測する。
20代のうちに結婚し、年齢とともに上昇する賃金を当てにしローンを組み郊外に家を建て、犬を飼い、、、のような。

これは完全に僕の持っているステレオタイプなので、違っていたら大変申し訳ない。

仮に僕の推測通りで、こういった生活の価値観が世の中に浸透していた場合においては、企業が社員に一生懸命働いてもらうことは現代ほど難しくなかったと思う。
管理職の椅子、上昇する賃金、それらにより得られる生活の安定とちょっとしたプライド、これらのインセンティブと引き換えに生涯の忠誠を差し出す。
それほど悪くない価値交換だと思う。

日本の戦後の経済成長を支えたのは、このように生きた企業戦士であることは間違いないと思うので、敬意を払いたい。ただ現代では、このようなインセンティブは残念ながら機能しなくなってきている。

大企業では管理職のポジションに就けるのは3割にも満たない状況で、さらにこれまで通りの賃金上昇にも期待が出来ない、さらに、キャリア形成における転職の”当たり前”化、女性の社会進出(今更言うことではないが)、インターネットやSNSの発展、テクノロジーの進歩などにより多様な価値観が世界に溢れかえっている。

そしてどの価値観も肯定されるべきと言う価値観も流布している。
これらのことを考えると、会社に忠誠を尽くすインセンティブが機能しなくなっていることは自明である。

さらに問題を難しくているのが労働者への手厚い保護だと考える。
企業が「おーお前はうちの会社の方針に納得がいかないのか。それならクビだ。」とは言えないのである。

これだけテクノロジーが進歩し、人の価値観も多様になっているのに、労働者を保護する労働基準法、労働組合法が数十年前の制定以来、ほとんど形を変えていない。

「蟹工船」に代表されるプロレタリア文学に象徴されるような、労働者が過酷に使用される世界観を想定されたような条文がそれらの法律には並んでいる。
故、労働者は企業に対してとてつもなく強い。正社員で雇ってしまうとパフォーマンスが低かろうが、企業は解雇することは出来ない。

このことは、日本の人材の流動化、リスキリングなどが進まない課題の大きな部分をしめていると感じる。明確に機能するインセンティブが失われつつある、且つ、解雇規制に関しては旧態依然とした法律により厳しいまま。
八方塞がりとは言わないが、六方くらいは塞がれている状態ではないか。
企業が社員にしっかりとパフォーマンスを発揮してもらい、生産性を上げるには、多様な社員の働くインセンティブを理解し、それに応じた報酬(給与だけではなく、経験や責任の範囲ややりがい)を与えることが必要である。

そしてこの流れは労働基準法、労働組合法などの抜本的な改訂が行われない限り加速し続けると予想する。社員の働くインセンティブを理解するには、当然のように一人一人の言うことを「聴く」ことが求められる。

「そんな面倒なこと出来る訳ない。」「会社は給料を払っているんだから、つべこべ言わず働け。」

うんうん。あなたの言うことは正論。
ただ、正論で人が動く訳ではないと言うのもまた真理であろう。

「聴く」ことが重要とかそんな問題以前に、過去から法律や状況を冷静に考えると企業のパフォーマンスを向上させるには、多くの企業が社員の声を「聴かざるを得ない」状況にあると考えた方がいいのではないだろうか。

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